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【沈む島の真実 キリバスから】優しい先生とちょいワル先生 2人の国会議員に助けられて感じる「人の温かさ」(産経新聞)

 真っ青な空とエメラルドグリーンのラグーン。日本から南東に約5千キロの太平洋のど真ん中に、ぽっかりと浮かぶ島国、キリバス。ここに住み込んで1週間が経ち、1時間の遅刻は当たり前といった“南国の島”ならではの、人々のおおらかさに何度も出くわした。一方で、政府関係の取材には許可や取材料が必要で、なかなか思うように進まない。途方に暮れていると、日本びいきの2人の国会議員が助け舟を出してくれた。(今泉有美子)

  [フォト]“優しい先生”国会議員のワイ・テブアイさん

 ■国会議事堂や橋、発電所…日本との関係深く

 キリバスの首都・タラワ滞在から数日経ったある日、警察に取材を断られて落ち込んでいると、1人の男性が話しかけてきた。

 「旅行ですか? もし街に行くのなら、一緒にバスに乗りましょう」

 男性はワイ・テブアイさん(50)。46人いるキリバスの国会議員のメンバーの1人だ。テブアイさんは、タラワの南東にある離島「タビテウエア」選出の議員で、2007年から議員を務めている。

 キリバスは33の環礁島からなり、人口は約10万人。うち、5割ほどががタラワに集中している。それぞれの島の人口割合に応じて、各島から国会議員が選出される。テブアイさんに国会議事堂の見学をお願いすると、「もちろんです。日本の皆さんにしっかり伝えてください」と快諾してくれた。

 キリバスの国会議事堂は、昔の建物が老朽化したために建て替えられ、2000年に完成した。議事堂の設計・建設は日本の建設会社「大日本土木」(岐阜市)が手がけた。キリバスにはこのほか、日本からのODA(政府開発援助)を元に同社が請け負って造られたものが少なくない。

 一番有名なのは、ヒョロヒョロと島がつながった細長いタラワの西のはずれ、商業街のあるベシオ島と本島をつなぐ橋「ニッポン(日本)・コーズウェイ」だ。

 この橋の建設も「大日本土木」が手がけ、地元住民が日本への感謝の意味を込めてそう名付けたという。コーズウェイ脇にある小学校では、この橋の完成を祝って、当時の校長の独断で「ダイニッポン小学校」と名前を変えてしまったほどだ。そのほか、冷凍倉庫や発電所なども日本のODAで造られている。

 テブアイさんに連れられ、議事堂の中へ進んだ。

 テブアイさんによると、キリバスは大統領を国家元首とする共和制。議事堂はそれほど大きくはなく、日本の県議会の議事堂程度の規模だ。国会は4カ月に1回開かれ、1回の会期は2週間という。傍聴席には一般の傍聴希望者のほか、国内の新聞社とラジオ局の記者が入る。ちなみに、キリバスには代表的な新聞社が3社あるが、いずれも新聞は日刊ではなく週刊だ。

 一通りキリバスの国会の仕組みを聞くと、今度は反対にテブアイさんから日本について質問された。

 「ハトヤマがやめるというニュースを聞いた。どうして、日本の総理大臣はそんなにすぐに辞めてしまうのか分からない。ハトヤマの前はアソウ、その前は…コイズミか。そして次は誰がなるんだ?」

 元総理大臣の名前は2人ほど抜けていたが、ODAの仕組みや現在は予算が大幅に削られつつあることなど、テブアイさんは日本についてとてもよく勉強していた。その理由を「日本にはたくさん援助をしてもらっており、これからもよい付き合いをしたいからだ」と答えた。

 ■ラグーンを眺めながら仕事のあとに一杯 贅沢な議事堂裏のバー

 議事堂を出て、ミーティング室や図書館などを見学した後、議員専用のレストランに案内してくれた。ここで、テブアイさんに勧められて鶏肉の野菜いためを注文したが、肉が軟らかく、オイスターソースの味付けも日本人の口に合う絶品だった。食後には、この国では珍しくコーヒーも出してくれた。

 キリバスの一般家庭では、毎日のご飯は白米と魚がほとんどだが、レストランや中華料理店では鶏肉や野菜、即席めんで作ったラーメンなどを食べることができる。ただし、どれも驚くほどしょっぱい上に、即席めんは伸びてブツブツ切れるためスプーンで食べなくてはならない。お世辞にも、「おいしい」とは言えないものばかり。

 現地で10年以上も住んでいる日本人男性が、「料理をしたこともないような中国人が、ビザのために料理店を開いてコックをしているようだ」と教えてくれた。

 食事をごちそうになったあと、テブアイさんは議事堂の裏側に連れて行ってくれた。ラグーンに面した、伝統的なパンダナスの葉を重ねた屋根のおしゃれなバーがあった。オープンは午後4時〜8時で、6時過ぎには夕日で真っ赤に染まる神秘的な景色を見ながら、お酒を楽しむことができる贅沢(ぜいたく)なバーだ。テブアイさんが、「ここの関係者用のバーだけど、よかったらあなたも飲みに来てもいいよ。僕は今日、まだ仕事がたくさんあるのでつきあえないけど…」と言ってくれた。そこで、お礼を言っていったん引き上げ、夕方に出直すことにした。

 ■バーで出会った陽気な議員 「いまからナイトクラブに行こう」

 夕方、日の入りの時間帯を狙ってバーに向かうと、カウンターにはバーテンダーの女性、ケサ・ゲティアさん(30)がいた。オーストラリア産の「VBビール」を注文し、ゲティアさんと話していると、1台の車が止まり、中から歌手の矢沢永吉さんにひげを生やしてさらに黒くしたような、“ちょいワル風”の男性が降りてきた。ゲティアさんが「彼も国会議員よ」と耳打ちしてくれた。

 男性はバーでVBビールを12缶購入して車に積んだ後、カウンターに座った。キリバスを取材するために住み込んでいることや、議事堂を見学したことなどを話すと、興味を持ったのか、「今から友達とナイトクラブに行くんだけど、一緒に行かないか」と誘ってくれ、一緒に行くことになった。

 途中、男性の親戚(しんせき)の家の前でその友達を待っていると、家から出てきたのは20代半ばの女性で、女優の安達祐実さん似の小柄な美女だった。「友達ではなく彼女だ。ワイフではないが、ワイフよりも愛している」と紹介された。2人の関係はそれ以上聞かなかったが、どの国にもこういう議員先生はいるようだ。

 キリバスのナイトクラブは、キリバスのオリジナルソングを流している店が大半で、外国の曲は週末の特別なイベントでしか流さないのだという。この国では、多くの人が大音量で家やバス、街角などでラジオを流しており、そこからはキリバスの曲ばかり流れるので、キリバスのオリジナルソングが国民に一番よく知られている。

 気づくと日付が変わっており、ホテルへと帰ることになった。実は、キリバスは飲酒運転はあまり厳しく禁止されておらず、酒気帯び程度での運転なら認められている。ほろ酔いの男性が車で送ると言ってくれたが、いくら法律で許されていても日本人の私は抵抗があったため、丁寧に断って歩いて帰ることにした。あまりに心配され、断るのが本当に大変だった。

 キリバスの夜空は、空よりも星の部分の面積が多いかのような美しさだ。上を見ながら歩いていると、あっという間にホテルに到着した。部屋に着くと、男性からメールが届いていた。

 「無事に着いたか。今度からは絶対に車に乗りなさい。あと、ホテルは高いから僕の親戚の家に引っ越しなさい」

 日本では最近、こういう“濃厚なおせっかい”になかなか遭遇できなくなった。キリバスは、昔ながらの人の温かさを感じることのできる国なのだ。

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by aqm2abx6nu | 2010-06-16 17:59